vol.38 2005年 3月 20日発行

2004奈良県女性海外派遣団団長
井口 久美子 さん

海外派遣団に参加して改めて感じた 『心の自立』の大切さ
 奈良県が平成元年から行なっている奈良県女性海外派遣調査研究事業。これは県内の女性を海外に派遣し、現地における男女参画の現状とその施策等を具体的に調査研究させることにより、男女共同参画社会づくりに向けての女性リーダーのエンパワーメントを図り、県内地域・団体・職場・行政等における方針や取組みに反映させることを目的としたもの。
 2004年度の派遣先はドイツ・スイス。10人の県内の女性たちが8日間で見たドイツ・スイスについて団長を務めた井口久美子さんにうかがった。

ドイツでは「職場は自分たちでつくろう」
井口さんは昨年10月に8日間、女性海外派遣団の団長として、ドイツ・スイスを訪問されたとうかがっていますが、どのようなところを訪問されたのですか。

井口 ドイツではフランクフルトにある『女性企業家支援協会』や、『ヘッセン州社会省 女性政策局』、『フランクフルト市学童保育園』を、スイスではジュネーブにある『国際労働機関(ILO)』や『男女平等促進センター』などにうかがいました。

その中でも特に印象に残っている機関はどこですか。

井口 どの訪問先も刺激を受けるところでした。『女性企業家支援協会』ではアンティーク家具の修復をする企業家の部屋を訪ね、3人の女性職人たちの仕事を見ました。この協会は1984年に設立されたのですが、その当時、女性の失業率が非常に高く、「働く職場がないのなら自分たちで職場をつくろう」という考えのもと活動が始まったそうです。協会は企業家セミナーを企画し、その知識をもとに受講者たちがビジネスプランを作成、そのプランが実現可能かどうか、資格の有無を資金面などあらゆる角度からチェックしてアドバイスを行なっていくのです。例えば子どもがいる人にはベビーシッターなどの対処を、企業後順調に行かない場合の相談など、アフターフォローも万全という印象を受けました。
仕事と家事の両立について

日本でも企業家は年々増えていますし、その中に女性も多いようです。しかしまだまだ、子育てなどの家庭の事情で、その進出が遅れているとも言われています。ドイツやスイスでは、仕事と家事の両立についてはどのような状況なのでしょうか。

井口 日本で、仕事と家事の両立について悩む女性が多いのは、『家事や子育ては女性がする』という、日本の古典的な考えからくるものだと思っていました。でも違ったのです。ドイツやスイスも、日本と同じ状況でした。

同じというのは、女性が働くことで生じる家族との問題などがですか。

井口 はい。ドイツやスイスでも、料理や掃除洗濯など女性が中心に家事は行なわれています。もちろん子育てもです。だから女性が働きに出ると、その家事をする時間が少なくなるし、子どもを預けることも考えなければいけません。そういう実態はどこも同じなのだと思います。ただ、日本と違うところはそれぞれの家庭で役割分担はきちんとされていて、男性にも家事の分担があるということです。またドイツやスイスでは在宅介護をしている家庭が少ないということでも時間的に差が出てきますね。

福祉先進国と言われるほとんどの国は税金が高い分、必要になると専門の施設で介護を受けられるよう、介護制度が整ってるからですね。井口さんは心理カウンセラーとしても地域でご活躍されているとうかがっていますが、女性からの相談の中に仕事に対する悩みは多くありますか。

井口 多いですね。両立するにあたっての育児や介護、家族との問題や、会社との問題、内容的にはよくあることです。しかし本人にとってはそれが解決されないと気持ちよく生活していけないということなのです。

よくあるということは、誰もが問題を抱えているということですから、この国自体が対策を考えていかなければいけないということですね。

五感で感じた日本との違い

井口 そう思います。どこの国でも同じ問題を抱えているのです。ただ日本との違いは、ドイツ・スイスにはその問題に対処するための支援や組織が身近に多くあるということではないでしょうか。

海外に出ると、それだけで、さまざまなことを学びます。例えば空港に降り立ってすぐに経験するのが言葉の違いによる戸惑い。もちろん覚悟のうえですが、食の文化の違いだけでも、日本食のありがたさ(笑)を感じるのは私だけでしょうか。現地には事前勉強では得られない、資料にないものを得られると思いませんか。

井口 はい、おっしゃっている意味がよくわかります。私も五感で感じた、学んだことが たくさんあります。たぶん経験した者にしかわからない、上手に表現できないものだと思います。しかし私たちは県の派遣団として訪問してきたわけですから、この意味や経験を伝えないといけない使命があり、先日3月5日(土)に奈良県社会福祉総合センターで報告会を開きました。また、地元のFMで番組を持って世界の男女共同参画についての放送なども行なっています。

自立することが大切
井口さんが今回のご経験で学んだことはどのようなことでしょうか。

井口 それは『自立』ですね。男も女も、人間は自立しないといけないということです。親も子も、それぞれが心の、精神的な自立をしてこそ、ほかへの思いやりも出てくるのではないでしょうか。親子の間の依存、例えば、女性で言えば、子どもの母親である自分、配偶者の妻である自分の立場で行動していませんか。

確かに、多くの女性が「○○ちゃんのお母さん」や「○○さんの奥さん」と呼ばれていますね。

井口 子どもが生まれると、妻のことを名前で呼ばなくなり「お母さん」と呼ぶ男性も多いのではないでしょうか。女性もその状況に依存してしまっているのではないかと思います。男女とも、ひとりの人間として自分で考え、自分の行動に責任をもって、決断や行動を起こすようになれば、さまざまな問題は少しずつでもクリアになってくるのだと思います。

 心理カウンセラー、FMパーソナリティー、とさまざまな分野で活躍の井口さん。今後もこの旅のテーマでもあった『男女共同参画社会』について、仲間たちとともに引き続き考えて行きたいと語っていました。


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