VOL.13

三代川愛護会会長 上田 喜通さん
川の中をもっと知ることが
大切なんです

 南に大和川、東に富雄川、 西に竜田川と、川に囲まれた斑鳩町の中心部は、条理制の区割りの面 影を残す田園地帯。先祖代々の土地であるが、その昔、農家にとっては、洪水等の、川=水の影響でその年の作物の出来高が左右する頭痛の種の土地でもあった。そんな歴史の中に、三代川が登場する。そしてそれは洪水被害の歴史の一端でもある。上田喜通さんは、斑鳩町の南端、大和川に面する目安の農業家。三代川愛護会の会長を務め、長年、水害による農作物への危機管理を訴えて、地元住民や行政に三代川管理の必要性を説いてきている。

〈聞き手〉編集長 上田さとる


 大水害…その時
この地は現在までに何度も水害にあって来ていますが、近年では昭和57年に大水害がありましたね。あの時、三代川の出口の水門を閉め、大和川の逆流を阻止したとうかがいました。どのような状態だったのですか。それ以降も毎年2〜3度は必ず大雨の時、同じように水門を閉めなければならないことが続いているようですが。
上田「あの時は大和川の水位 が見る見るうちに上がってきて、このままではたいへんな状態になると判断しました。三代川河口の水門を閉め、あえて地場で水を溢れさせても、激しく強力な大和川からの逆流を防いだのです。地元の中では批判もありましたが、最悪を防ぐための苦肉の策でした」。
 農業は水がなかったら成り立たん!
 水がありすぎても成り立たん!
まさに断腸の想いでの策ですね。ちょうどその時でしたね、大和川沿いの王寺の町が浸かったのは。街全体、2階付近まで水がきていたそうです。
上田「私らは農業で50年間食べてきています。だからこそ、水の恐ろしさは、よく解っているんです。田んぼや畑のものの、成りの良し悪しは水で決まりますから。ここら辺はそれこそ、昔から何回も水害で全滅してきた農地ですから、水が多すぎてもあかんのです。農業は水がなかったら成り立たんし、水がありすぎても成り立たんのですよ。水害っていえば農家だけが苦しい状態になってると思われがちですけど、結局消費者である一般 の人たちが被害に会っているということですよねぇ。だからこそ、地元の住民がきちんと考えて行かないといけないと思うのです」。
確かに、自然災害等で農作物に被害があると困るのは消費者である私たちです。
上田「実は昭和41年に三代川愛護会が結成されたのもそんな考え方からです。当時、農業排水用水路として作られた三代川ですが、近年になって上流での宅地化が進み、生活排水が流されるようになったのです。『五ヵ村のつゆ張り』と呼んで、5つの村が出来高等で割り当てを決め、協力してやってきた川の掃除等の管理も手に負えなくなってきたからなのです」。
『五ヵ村のつゆ張り』、現在の川ざらいですね。それは河川管理整備の歴史でもありますね。五ヵ村とはどこですか。
上田「目安、服部、小吉田、稲葉、五百井です。三代川は今から約200数十年前の享保年間、この辺りを預かっていた大庄屋『助宗』さんが悪水抜きとして掘削したもので、各大字の領分の間を縫って造ったので、角張っている境に合わせて川の形も要所要所で直角だったのです。現在の流形に改修されたのは昭和33年頃のことです」。
『助宗』から連綿と現在へ
融念寺境内にある石碑『断恨碑』に祀られているのが江戸時代の大庄屋『助宗』ですね。
上田「そうです。『助宗』さんは享保7年の大雨の時に大和川が決壊し、五ヵ村が水に浸かり、なかなか復興できなかったことから、私財を投じて三代川を掘り、大和川への水はけをよくしたとされている人物です。三代川があったからこそ、今も私たちはここで生活をしています。ですから『助宗』さんの功績を残したい、正確な三代川の歴史を語り継ぎたいと、毎年5月のはじめに『助宗』さんの法要を行っています。今年は5月11日に開催し、たくさんの方々がお参り下さいました。『断恨碑』というのは『助宗』さんは罪人として処刑されたということから、後世の明治38年に建立されています。処刑の理由は三代川工事を無届で行ったこととか、大庄屋であったために私服をこらしていたのではないかとか、憶測は様々です」。
 水質浄化を目指して
今後はどのような活動を目指していらっしゃいますか。
上田「これからは、水質浄化を地域住民といっしょに考えて行きたいと思っています。 ゴミ拾いも大切ですが、もっと川に近付いて多くの人に川の中を見てほしいです。 どのような色なのか、どんな臭いなのか、何が流れているか…川を知ることで目覚めるはずです」。
自然であっても人的であっても、災害被害の当事者は地元の住民であるということを意識し、三代川をはじめとした周辺の河川の水質浄化を考えてほしいと上田喜通さん。川=水の歴史と共に生活の歴史がここにありました。

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